マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ) Maria João Pires, piano
 現代を代表するピアニスト、マリア・ジョアン・ピリスは、芸術への真摯な姿勢、語りかけるような表現力、そして生命力にあふれた演奏で聴衆の心をつかんで放さない。

1944年リスボン生まれ、4歳で初めてステージに立つ。9歳で、ポルトガル政府により青少年音楽家に対しての最高賞を授与される。1953年よりリスボン大学で作曲・音楽史及び音楽理論を学ぶ。西ドイツに留学時にはミュンヘン音楽アカデミーでローズル・シュミット、ハノーファーでカール・エンゲルの各氏に師事。

数々の華々しい演奏活動はファンならずともよく知られるところだが、1970年以降、彼女は芸術や音楽が人間社会に与える影響を研究し、その成果を教育的プログラムとして実践していくことに心血を注いできた。そしてこの10年で日本、ブラジル、ポルトガル、フランスとスイスなどにおいて、世界中の学生と多数のワークショップを開催し、彼女の音楽哲学を伝えていくための活動を献身的に行っている。

また彼女は才能のある若いピアニストたちと協力して2つのプロジェクトを立ち上げた。ひとつは「パルティトゥーラ・プロジェクト」。このプロジェクトは、さまざまな世代のアーティストをつなぎ、自己の利益だけを求めるのではなく他者との共存、他者との分かち合いを目指すもので、競争を重視しがちな現代に、新たな潮流を作ろうとするものである。パルティトゥーラ・プロジェクトの一環としてこれまでにイタリア、スペイン、ベルギー、オランダ、カナリア諸島、フランス(パリ市立劇場を含む)、イスタンブール、ロンドンのウィグモア・ホールでリサイタルを行っている。もうひとつは、「イクイノックス」というプロジェクトで、6歳から14歳の恵まれない境遇にある子供たちを、合唱への参加を通して支援する社会プログラムである。

近年、ベルギーのエリザベート王妃音楽院で教鞭を執り、非凡な才能に恵まれた若いピアニストたちと活動している。

録音もソロ、室内楽、コンチェルトなどと幅広い。最近の録音としてオニックス・レーベルへの移籍第一弾、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番、第4番(ダニエル・ハーディング指揮スウェーデン放送響)がある。2014年夏には、ピリスの70歳の誕生日を記念して、エラートから1970年代と1980年代の録音が再リリースされたほか、ドイツ・グラモフォンからもソロ・レコーディングをすべて収めたボックス・セットがリリースされた。

2024年度 高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。